医療法務支援
① 医療法人設立前に必要な準備
医療法人の制度趣旨
医療法人とは、医療法に基づき設立される法人であり、診療所や病院などの運営基盤を強化し、提供する医療の質の向上および運営の透明化を図ることを目的としています。 制度趣旨としては、資金の集積を容易にし、医療機関の経営に永続性を持たせることで、医療事業の経営困難を緩和することにあります。
社団法人と財団法人の違い
医療法人の最も基本的な区分として、「社団たる医療法人」と「財団たる医療法人」 があります。 このうち、社団たる医療法人が医療法人全体の大多数を占めています。
違いとしては、医療施設を開設することを主たる目的として、社団たる医療法人は人の集合体に法人格が付与され、財団たる医療法人は寄附された財産に法人格が付与されていることです。社団たる医療法人は定款により、財団たる医療法人は寄付行為により、運営に必要なルールが定められています。
非営利性
医療法人は「非営利」であり、利益の配当ができません。事実上、配当とみなされる行為も行えません。利益剰余金は積立金とし、施設や従業員の待遇などの改善に充てられます。職務執行の対価として役員報酬を得ることが禁止されているわけではありません。
根拠法:医療法第54条
持分なし社団医療法人
現在新設される社団たる医療法人は、平成19年の医療法改正により、「持分なし」で設立されます。今も一部の医療法人には、社員が法人の財産に対して持分を有する「持分あり社団医療法人」が存在しています。非営利性の原則により、基金を定款で定めた場合を除き、拠出した財産の払い戻しはありません。
一人医師医療法人
昭和61年医療法改正後、医師又は歯科医師が常時一人又は二人勤務する小規模な診療所を開設する医療法人を「一人医師医療法人」と言います。医療法上は、設立や運営、権利及び義務に関して区別はありません。医療法人の機関設計においては、理事3人以上、監事1人以上を置くことが制度上の原則とされています。医療法第46条の5の但し書きに基づき、東京都では診療所を1か所のみ開設する医療法人に限り、都道府県知事の認可を得た場合、理事2人を置くことで設立が認められています。
医療法人の基本事項
医療法人の行為は、すべて法令等、定款(寄附行為)、社員総会(財団の場合は理事会)の決定に拘束され、理事長等が独断で処理することはできません。医療法人の資産の管理において、私生活のそれと混同することができません。医療法人は、開設する診療所等の業務を行うために必要な施設、設備、資金を有しなければなりません。
根拠法:医療法第41条、医療法施行規則第30条の34
【附帯業務と附随業務】
附帯業務
医療法人は、その開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、医療法第42条各号の業務の全部又は一部を行うことができます。第6号の保健衛生に関する業務として、薬局や歯科技工所があります。
附随業務
開設する病院等の業務の一部として又はこれに附随して行われるものは収益業務に含まれず、特段の定款変更等がなくても行えます。病院等の建物内で行われる売店、敷地内で行われる駐車場業等が付随業務にあたります。
「医療法人の附帯業務について」(平成19年3月30日付医政発第0330053号)
【医療法人のメリット・デメリット】
メリット:
組織的な運営が可能になる
事業承継がしやすくなる
社会的信用が高まる
デメリット:
決算後の届出、変更に関する申請等、事務が煩雑になる
役員に法定欠格事由がある
①法人 ② 成年被後見人又は被保佐人 ③ 医療法、医師法、歯科医師法等の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者 ④ ③に該当する者を除くほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又 は執行を受けることがなくなるまでの者
根拠法:医療法第46条の5第5号
医療法人設立前に必要な準備
1. 設立総会
あらかじめ設立総会を開催し、次に掲げる事項を審議し、決定します。
医療法人の設立の承認
社員の確認
原則3名以上
定款の確認
設立時の財産目録の承認
会計年度、初年度分の事業計画及び収支予算の承認
役員の選任
役員として、理事3人以上及び監事1人以上を置く
監事には、理事との親族関係や取引関係がない第三者を選任すること。
理事と監事は兼任できません。
社員と理事長は兼務できます。
理事長は医師または歯科医師でなければならない。
根拠法:医療法第46条の5から第46条の5の4
設立時の財産目録の承認
設立代表者の選任
診療所の土地、建物等を賃借する場合の契約の承認
その他の必要事項
設立総会の議事については、議事の概要を議事録として作成します。
役員の欠格事由
・医療法第46条の5第5項 心身の故障のため職務を適正に執行することができない者として厚生労働省令で定めるもの
① 成年被後見人又は被保佐人
② 医療法、医師法等、医療法施 行令第5条の5の7に定める医事に関する法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
③ ②に該当する者を除くほか、 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は、執行を受けることがなくなるまでの者
医療法人名称
同一名称の法人が存在しないか、東京都に事前確認を行います。
役員・社員名簿
履歴書
印鑑登録証明書
役員就任承諾書
管理者就任承諾書
理事長医師免許証(写し)
管理者医師免許証(写し)
理事医師免許証(写し)
2. 診療所・施設関連の確認
診療所等の概要
施設等の概要
周辺の概略図
建物平面図
職員構成内訳表
【不動産関連書類】
不動産賃貸借契約書(写し)
賃貸借契約引継承認書(覚書)
転貸の場合は原契約やマスターリース契約書の写しも添付
登記簿上の所有者と転貸人の関係が確認できる書類が必要
建物登記事項証明書
土地登記事項証明書
近傍類似値について(役員等、利害関係者から物件を賃借する場合のみ)
3. 財務・資金関連の確認
医療法人に引継げる負債 (契約書又は請求書及び領収書)
・基金拠出財産又は拠出(寄附)財産の取得時に発生した負債であること
・法人設立時に拠出と共に負債を引継ぐこと
・運転資金の負債は引継ぐことができないこと
【財産目録】
財産目録明細書
不動産鑑定評価書
減価償却計算書
現物拠出の価額証明書
基金拠出契約書等(基金制度を採用する社団医療法人の場合)
拠出(寄附)申込書(基金制度を採用しない社団医療法人の場合)
預金残高証明書
診療報酬等の決定通知
設立時の負債内訳書
負債の説明資料
負債の根拠書類
債務引継承認願
リース物件一覧表
リース・割賦契約書(写し)
リース・割賦引継承認
4.医療法人設立の計画・予算・実績
事業計画書(2か年又は3か年)
予算書(2か年又は3か年)
予算明細書
職員給与費内訳書
初年度が6か月未満の場合は、3年度分作成すること
実績表(2年分)
確定申告書(2年分)
診療所の開設届の写し(個人診療所の開設実績のある場合)
事前調整事項
仮申請前に確認すべき関係者との調整
▪ 不動産関連(契約書又は覚書、契約書案等)
建物を第三者から賃借している場合、東京都への仮申請前に医療法人化することについて所有者の了解を得ていること
▪ 金融機関関連(金銭消費貸借契約書及び支払予定表等)
負債の引継ぎが可能であるかを、仮申請前に金融機関等に確認していること
▪ リース会社関連(割賦契約書、割賦引継承認願等)
仮申請前にリース会社に確認していること
資産計上するリース(①物件に係る負債を法人に引き継ぐ場合②割賦購入契約に係る資産を拠出し、割賦未払金を法人に引き継ぐ場合)と資産計上しないリース(オペレーティングリース、所有権がリース会社)があります。
出典:東京都医療局 医療法人設立の手引
医療法人設立、解散、合併認可等に係る年間スケジュール(令和7年度)
医療法、医療法施行令、医療法施行規則
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