医療法務支援
④ 医療法人設立後の運営
医療法人を設立した後は、毎年の報告義務や組織運営、変更手続きなど、継続的な実務対応が求められます。
1. 決算後業務
2. 定款変更認可申請(事前の認可が必要な事項)
3. 機関の設置
1. 決算後業務
① 事業報告書等の提出
内容:事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、関係事業者との取引に関する報告書、
監事の監査報告書を東京都知事に届出
根拠法令:医療法第52条第1項
提出期限:毎会計年度終了後3か月以内
② 経営情報等報告書の提出
内容:病院・診療所ごとの経営情報を東京都知事に報告
根拠法令:医療法第69条の2第2項
提出期限:毎会計年度終了後、原則3か月以内
➂ 登記事項変更届の提出
内容:登記事項に変更があった場合(資産総額の変更、理事長の重任又は変更、診療所や附帯業務の開設又は廃止、法人名称及び主たる事務所の所在地の変更 等)
医療法人は登記をしたときは、遅滞なく東京都知事に届出
根拠法令:医療法施行令第5条の12
④ 役員変更届の提出
内容:役員に変更があった場合(任期満了による重任の場合を含む。)は、医療法人の役員変更届を、遅滞なく東京都知事に提出
根拠法令:医療法施行令第5条の13
⑤ 書類の整備・閲覧
整備:医療法人は、事業報告書等、監事の監査報告書、定款又は寄附行為を常に主たる事務所に備えておくことが義務付けられています。また、社員若しくは評議員又は債権者から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、閲覧に供しなければなりません。
根拠法令:医療法第51条の4
閲覧:都道府県知事は、医療法人の定款・寄附行為、事業報告書等について請求があった場合には、これを閲覧に供しなければならないとされています。
東京都ではオンラインでの閲覧は過去3年間に届け出られたものに限り可能です。
根拠法令:医療法第52条第2項
出典:東京都福祉保健局 定款・寄附行為及び事業報告書等の閲覧方法のオンライン化について
2. 定款変更認可申請(事前の認可が必要な事項)
定款変更認可申請
事前審査(仮申請)提出から認可書の交付まで、3か月程度かかります
内容:定款または寄附行為の内容変更のうち、法人の根幹に関わる事項について、東京都知事の認可を受けるための申請です。認可を受けなければ、その変更は効力を生じません 。
【定款の変更認可申請の流れ】
仮申請(事前審査、書類一式の提出 )
↓
本申請の提出
↓
東京都
審査・決裁
↓
認可書の受領
【申請事項】
診療所等、附帯業務の開設又は廃止
診療所等の拡張
診療所等の名称変更
法人名の変更
役員定数の変更
会計年度の変更
持分ありから持分なし法人への移行
主たる事務所の他道府県への移転
その他条文変更
東京都:各種認可申請の添付書類一覧PDF(令和7年4月1日時点)
根拠法:医療法第54条の9
認可書受領の後
【診療所等・付帯業務の開設の流れ】
事業の登記(司法書士業務)
↓
診療所等の開設手続き
↓
診療所等の開設
3. 機関の設置
社員総会・理事・理事会・監事
社団たる医療法人は、社員総会、理事、理事会及び監事を置き、財団たる医療法人は、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を置きます。
根拠法:医療法第46条の2
【社員総会】
社員総会は、社団たる医療法人の最高意思決定機関であり、社員が原則3人以上必要です。
社員は、各一個の議決権を有します。
理事長は、年2回以上、定款で定める時期に定時社員総会を開きます。
社員総会の議事については、法令に定めるところにより、議事録を作成しなけれ ばなりません。 また、議事録は社員総会の日から10年間、主たる事務所に備え置かなければなりません。
【社員総会決議事項】
理事及び監事の選任及び解任
定款の変更 ・基本財産の設定及び処分(担保提供を含む。)
毎事業年度の事業計画の決定又は変更
収支予算及び決算の決定又は変更
重要な資産の処分
借入金額の最高限度の決定
社員の入社及び除名
解散
他の医療法人との合併若しくは分割に係る契約の締結又は分割計画の決定
その他重要な事項
社員は法人運営の重要事項について議決権・選挙権を行使する者であり、意思決定に参画できない者が名目的に社員に選任されていることは適正ではありません。
根拠法:医療法第46条の3から第46条の3の6
【役員の選任及び解任】
役員として、理事3人以上及び監事1人以上を置きます。
社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議によって選任します。
自然人であること。
欠格事由に該当していないこと。
役員の任期は2年以内とすること。
任期の切れている役員がいないこと。
選任関係書類が整備されていること。
① 社員総会議事録又は評議員会の議事録
② 就任承諾書
③ 履歴書
根拠法:医療法第46条の5から第46条の5の4
【理事】
社団たる医療法人は、理事は社員総会において選任するとされています。
理事長は理事の互選によって選出し、医療法人を代表し、医療法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します。
原則として医師又は歯科医師であることが必要です。
根拠法:医療法第46条の6から第46条の6の4
【理事会】
3ヶ月に1回以上の開催(ただし、定款に定めたときは年2回以上で可)
理事長は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告します。
理事会は、次に掲げる職務を行います。
① 医療法人の業務執行の決定
② 理事の職務の執行の監督
③ 理事長の選出及び解職
理事会の議事については、法令に定めるところにより、議事録を作成しなければ なりません。 また、議事録は理事会の日から10年間主たる事務所に備え置かなければなりません。
(医療法第46条の7から第46条の7の2 )
競業及び利益相反取引を行う場合
理事は、理事会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません また取引後、遅延なく、当該取引についての重要な事実を理事会に報告しなければなりません。
理事が自己又は第三者のために医療法人の事業の部類に属する取引をしようとするとき
理事が自己又は第三者のために医療法人と取引をしようとするとき
医療法人が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において医療法人と当該理事との利益が相反する取取引をしようとするとき
例として
医療法人の業務のため理事が所有する不動産を医療法人が賃借するとき
医療法人が所有する車両を理事に売却するとき
医療法人の業務のために理事から担保・利息が生じる資金借入れをするとき など
(医療法第46条の6の4 、第46条の7の2 、第46条の7の2 、第47条)
(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(競業及び利益相反取引の制限)第84条)
H28.9.1改正医療法の施行により,「特別代理人」選任の知事認可は不要となりました。
【監事】
監事は、医療法人の業務・財産状況の監査等を行います。
社団たる医療法人の場合、監事は社員総会において選任するとされています。
監事は、医療法人の業務又は財産の状況について、監査報告書を作成し、毎会計年度終了後3月以内に社員総会又は評議員会及び理事会に提出しなければなりません。
(医療法第46条の8から第46条の8の3 )
出典:東京医政局都 医療法人運営の手続き
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