医療法務支援
医療法人設立等
更新日: 2026年4月8日
1 医療法人の制度趣旨
医療法人とは、医療法に基づき設立される法人であり、診療所や病院などの運営基盤を強化し、提供する医療の質の向上および運営の透明化を図ることを目的としています。 制度趣旨としては、資金の集積を容易にし、医療機関の経営に永続性を持たせることで、医療事業の経営困難を緩和することにあります。
平成19年4月以降設立できる医療法人は、新法の医療法人のみで、 出資持分なし(社団は基金制度利用可能)となります。
社団と財団法人の違い
医療法人の最も基本的な区分として、「社団たる医療法人」と「財団たる医療法人」 があります。 このうち、社団たる医療法人が医療法人全体の大多数を占めています。違いとしては、医療施設を開設することを主たる目的として、社団たる医療法人は人の集合体に法人格が付与され、財団たる医療法人は寄附された財産に法人格が付与されていることです。社団たる医療法人は定款により、財団たる医療法人は寄付行為により、運営に必要なルールが定められています。
持分なし社団医療法人
現在新設される社団たる医療法人は、平成19年の医療法改正により、「持分なし」で設立されます。今も一部の医療法人には、社員が法人の財産に対して持分を有する「持分あり社団医療法人」が存在しています。非営利性の原則により、基金を定款で定めた場合を除き、拠出した財産の払い戻しはありません。
一人医師医療法人
昭和61年医療法改正後、医師又は歯科医師が常時一人又は二人勤務する小規模な診療所を開設する医療法人を「一人医師医療法人」と言います。医療法上は、設立や運営、権利及び義務に関して区別はありません。医療法人の機関設計においては、理事3人以上、監事1人以上を置くことが制度上の原則とされています。医療法第46条の5の但し書きに基づき、東京都では診療所を1か所のみ開設する医療法人に限り、都道府県知事の認可を得た場合、理事2人を置くことで設立が認められています。
医療法人の基本事項
医療法人の行為は、すべて法令等、定款(寄附行為)、社員総会(財団の場合は理事会)の決定に拘束され、理事長等が独断で処理することはできません。医療法人の資産の管理において、私生活のそれと混同することができません。医療法人は、開設する診療所等の業務を行うために必要な施設、設備、資金を有しなければなりません。
根拠法:医療法第41条、医療法施行規則第30条の34
2 医療法人の業務範囲
Ⅰ.本来業務
医療法人は病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設 又は介護医療院の開設を目的として設立される法人です。(医療法第 39 条)
Ⅱ.附帯業務
医療法人は、その開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、次に掲げる業務(これに類するものを含む。)の全部又は一部を行うことができる。(医療法第42条一号から八号) なお、附帯業務を委託すること、又は本来業務を行わず、附帯業務のみを行うことは 医療法人の運営として不適当であること。
Ⅲ.収益業務
社会医療法人は、その開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、その収益を当該社会医療法人が開設する病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の経営に充てることを目的として、 Ⅲ.収益業務 厚生労働大臣が定める業務(平成 19 年厚生労働省告示第 92 号 収益業務①から⑭)を行うことができます
Ⅳ.附随業務
開設する病院等の業務の一部として又はこれに附随して行われるものは収益業務に含まれず、特段の定款変更等は要しません。(附随業務として行うことが可能)
病院等の施設内で当該病院等に入院若しくは通院する患者及びその家族を対象として行われる業務又は病院等の職員の福利厚生のために行われる業務であって、医療提供又は 療養の向上の一環として行われるもの。
病院等の施設外で当該病院等に通院する患者を対象として行われる業務であって、当該 病院等において提供される医療又は療養に連続して行われるもの。
①及び②において、当該法人が自らの事業として行わず、当該法人以外の者に委託して行う場合にあっては、当該法人以外の者が行う事業内容が、①又は②の前段に該当するも のであるときは、当該法人以外の者への委託は附随する業務とみなし、①又は②の前段に 該当しないものであるときは、附随する業務に含まれないものとして取り扱います。
3 非営利性
医療法人は、決算後生じる剰余金を社員等に配当することは禁じられています
(医療法第54条)
(1) 医療機関の開設主体が営利を目的とする法人でないこと。 ただし、専ら当該法人の職員の福利厚生を目的とする場合はこの限りでない。
(2) 医療機関の運営上生じる剰余金を役職員や第三者に配分しないこと。
(3) 医療法人の場合は、法令により認められているものを除き、収益事業を経営していないこと。
事実上、剰余金の配当とみなされる行為も認められません。
剰余金は、設備整備に要する費用、職員に対する給与改善費用、将来の施設整備のための積立金等に充てます。
医療法人は、社会医療法人を除き、病院、診療所等の本来業務、附帯業務及び附随業務以外で収益を得ることは禁じられています。
4 事業報告書等
事業報告書等、医療法人役員変更届、医療法人の登記事項の届出
医療法人の経営情報等報告書(会計年度終了後3か月以内)
医療法の改正により、医療法人に関する情報の調査及び分析等を行うための新たな制度が令和5年8月1日から施行されました。これに伴い、医療法人は、事業報告書等とは別に、病院・診療所ごとの経営情報等を都道府県に報告することが義務化されました。
5 機関設計
社員
社員は合議体の一員であり、原則3名以上 。社員は社員総会において法人運営の重要事項についての議決権及び選挙権を行使する者であり、 実際に法人の意思決定に参画できない者が名目的に社員に選任されていることは適正ではありません。社員の入社については、社員総会の承認が必要となります。
社員総会
医療法人の最高意思決定機関
定款に社員総会の議決事項の定めがあります。年に2回(予算の決定・決算)以上の定時総会を開催します。理事長はいつでも臨時総会を招集できます。社員は社員総会において1個の議決権を有します。
理事長
医師又は歯科医師である理事のうちから選任します。医療法人を代表し、医療法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します。医療法人の代表権は理事長のみに与えられ、複数の医療法人の理事長を兼ねることはできません。
監事
医療法人の業務及び財産の状況を監査します。 医療法人の業務又は財産の状況について、毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後3月以内に社員総会及び理事会に提出します。監事は医療法人の理事、従業員を兼ねることができません。(役員の親族、法人と取引のある個人等も不可)理事会への出席義務があります。
6 医療法人のメリット・デメリット
メリット
組織的な運営が可能になる
事業承継がしやすくなる
社会的信用が高まる
デメリット
決算後の届出、変更に関する申請等、事務が煩雑になる
役員に法定欠格事由がある
①法人 ② 成年被後見人又は被保佐人 ③ 医療法、医師法、歯科医師法等の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者 ④ ③に該当する者を除くほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
根拠法:医療法第46条の5第5号
└ スケジュール、医療法人設立の流れ
東京都では年に2回、医療法人設立認可申請の受付があります。
※仮申請から登記完了まで、約6か月程度を要します。
【医療法人設立までの流れ】
定款・寄附行為(案)の作成
↓
設立総会の開催
↓
設立認可申請書の作成
↓
設立認可申請書の提出
(事前審査)仮申請
↓
設立認可申請書の審査
(保健所等の関係機関への照会、面接等を含む。)
↓
設立認可申請書の本申請
↓
医療審議会への諮問
答申
↓
設立認可書交付
↓
設立登記申請(司法書士業務)
法務局へ申請
↓
登記完了(法人成立)
└ 診療所等開設、保健所への対応、必要書類の整備
【診療所等開設の流れ】
登記届
↓
病院(診療所)開設許可申請
↓
病院(診療所)開設許可(許可書受領)
↓有床の場合 病院(診療所)使用許可申請して、使用許可(許可証受領)
病院(診療所)開設届
個人開設の病院(診療所)廃止届
【↑個人開設から医療法人開設に切り替えた場合(医療法第9条第1項)】
登記届の提出
病院(診療所)開設許可申請
病院(診療所)の開設届の提出
診療用エックス線装置備付届
診療用エックス線装置を備付けた場合の届出
(医療法施行規則第24条から第29条)
その他のお手続き
税務関係、所管の地方厚生局への保険医療機関の指定申請の社会保険関係のお手続きは 税理士、社会保険労務士にご相談ください。
個人から法人への法人資産の名義換え、光熱費等名義変更のお手続が必要となります。
└ 決算後業務、定款変更認可申請(事前認可が必要な事項)
医療法人を設立した後は、毎年の報告義務や組織運営、変更手続きなど、継続的な実務対応が求められます。
1. 決算後業務
事業報告書等の提出
経営情報等報告書の提出
登記事項変更届の提出
役員変更届の提出
書類の整備・閲覧
2. 定款変更認可申請(事前の認可が必要な事項)
☑長期的な計画はできていますか
実績に基づいた無理のない予算を立てていますか?
☑財産の整理ができていますか
診療所財産と個人財産の区別が適切ですか?
☑非営利性が確保されていますか
剰余金の配当とみなされる行為も禁止です
これらの業務は、必要に応じて各士業の先生方と提携や、または当事務所からの引き継ぎにて対応いたします。
関係法令
医療法
医療法施行規則
「医療法人・医業経営のホームページ」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/igyou/index.html)を加工して作成
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